足早にバスルームへかけ込んで行った彼女。
戻って来るやいなや、そそくさと身支度を整え軽く化粧を始めながら、
「ワタシ、もう行かなきゃ」
と鏡を見ながら伝えると、あっと言う間に部屋を後にしたのでした。
その素早さをただ見届けるしかなく部屋に取り残された私は、タバコで気だるさを誤魔化しながら朝食を取るために遊園地に隣接しているドライブインへとぼとぼ足をむけたのでした。
ドライブインと言っても、クーラーもないよくあるオープンスペースな大型の食堂といった感じ。
部屋からは唯一徒歩で行き来できる胃袋を満たす場所と言うこともあり、食事はほぼここで済ませていた私だが日本人ということもあり結構な有名人でちょっぴり人気者。むしろ“ベトナム語が分からない常連客”として珍しがられているだけかもしれないが。
いつもながら読めないメニューに目やるが注文するものはいつも同じ。
以前適当に注文して出てきた料理が朝の定食化しているのだが、ベトナムだけあってパンも口にできるのは嬉しいところ。
朝食を頬張っていると、いつものように一緒に頼んだアイスコーヒーが後からテーブルに置かれた。
が、運んできたお姉さんがそのままテーブルの向かいに腰掛けてきたのでした。
椅子を引く音に気づき顔を上げると、そこには園内で働いている顔見知りのお姉さんが座っていたのでした。
どうやらアイスコーヒーも彼女のものの様子で、私を見かけてテーブルに寄ってきた雰囲気だった。
以前から人懐っこくしきりに話しかけてくれていたものの、意思を疎通できる手段がなく最近は顔を合わせても微笑みかけてくれるくらいだった彼女なのだが。。。。
この時も「グッドモーニング」とたげ挨拶を交わし特に会話をするわけでもなかったのだが、彼女は微笑みながらバッグからあるものを取り出したのでした。
彼女が誇らしげに取り出したのは、(この周辺で持っているのが珍しい)スマホ。
早速、翻訳ソフトであろう画面を私に見せながら私に語りかける彼女。
彼女のスマホの私が英語入力し、それをベトナム語に翻訳しながらコミュニケーションが始まったのだが、ソフトのせいか私の語学力が未熟なせいかスムースにはいかないのでした。
あいにく私のバイブル「旅の指さし会話帳(ベトナム語編)」は、部屋に置いたままにしている。
“次回はあれを使うと、もっと仲良くなれそうだ。。。♪”
そう思いながらも、スマホを介してではあるものの必死に私に問いかける仕草を見て、私も悪い印象を持つわけがないのでした。
しばらくやり取りを繰り返し、最後は連絡先を交換。
じゃあねとばかりに仕事に向かうため席を立とうとした彼女のスマホが短く鳴り、どうやらメッセージが着信したようだった。
画面を覗き込み途端に周囲を見渡す彼女。それを不思議に感じ同じように広い店内を見渡す私。
“あそこだわ♪”
と言わんばかりに彼女が指さした店内の片隅には、さっき私の部屋から出て行った彼女と同じ服装の女性の後ろ姿が。
私の部屋を後にした彼女が朝食を取りに立ち寄っていたようで、私たちに気づきメッセージを送ってきたことは明白。
すると今度は私のスマホがメッセージを着信。
「“おはよう”は、もう行ったかしら?」
ここまで快適に過ごせていたチャウドック(Chau Doc)滞在、何か暗雲が近づいて来ているような予感を感じつつも、この場面で返信すべきか否かスマホ画面を見つめる私なのでした。
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