「おっけー、おっけー!」
オヤジは、時折酒をあおりながらも相変わらず連呼する。
その場に残っている娘たちは、何事もなかったかのようにキャピキャピしながら夕食を啄んでいる。
次女は無表情のまま立ち尽くしているが、目が合っても見透かしたような視線を返してくるだけで私に話しかける素振りは見せないのでした。
ほどなくすると、三女が戻ってきたが特に席を外した時と変わった素振りはなかった。
着替えでもしていれば私の期待は確定に変わっていたのだろうが、トイレにでも行っただけなのだろうか。
戻ってくるなり三女はオヤジと何やら真顔で話を始めたが、不思議だったのはさっきまで上機嫌そうだったオヤジの表情から笑顔が消えていた。
再び席を外した三女、それを見送る次女。。。そして何が起きようとしているのか期待と不安を隠せない私。
そんな中、次女は消えていく三女を目で追いながら私に向かってこう言ったのでした。
「もう少し待ってね。あの子、こういうの初めてでよくわかっていないから」
“もしかして・・・・”
期待が膨らむ私に次女はこう続けたのでした。
「ところでアナタ、日本人よね。ベトナム語も分からないんでしょ?じゃ、カンボジア語も分からないわよね?」
当然、どちらも分かるはずがない私は頷くしかないのでした。
それを見て次女は軽く息をつきながら、
「私たち、ずっとカンボジア語で話してたのよ。アナタ、分からなかったのね。」
それにも驚いたが、三女が席を外した後にやたら私に話しかける次女が不自然に思えたが、それがまた私の期待を膨らませていたことは言うまでもないのであった。
オヤジのほうも三女が席を外してからは何気に無口になったが、私にはむしろ次女が急に場を繕うように私に話しかけることのほうが、『何かが起きる』予感を感じさせていたのでした。
オヤジは次女に何か話し始めたが、当然何を言っているのは不明。が、そんな会話は、私にとってはどうでもよかった。
私の関心はむしろ、『三女が再び戻ってくるのかどうか、戻ってきたときには私に何か話しかけるのか』だけ。
「おっけー、おっけー!」
三女の声が奥から聞こえ始めた、徐々にその声は近づいてきた。
現れた三女は黒い衣装に着替えを済ませていて少し大人びて見えたが、私と目が合うと微笑む顔は幼さを隠しきれていなかったのでした。
“この局面で着替えて再登場って・・・そういうこと、だよね?”
私は、無意識のうちにオヤジに視線を送っていたのでした。
オヤジは私の視線に気づくと小さく頷いたのでした。が、そこで割って入ってきたのは次女。
何やら私のわからない言葉(カンボジア語?)で三女に早口でしゃべり始めたのでした。
唯一、私が理解できた次女の言葉は、
『気をつけるのよ』
という英語だけ。
三女は、軽く頷き「おっけー、おっけー!」と微笑み返すのでした。
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