彼女の部屋から私の滞在するホテルまでは予想通りそう遠くはなく、容易に部屋にたどり着くことができた私。
幸いなことに今日は特に予定もない、部屋で溜まっていたデスクワークをぼちぼち片づけることにしたのでした。
黙って部屋を抜け出した罪悪感に駆られながらも、気分を切り替えようとシャワールームに足を運びます。
“残り香”を洗い流しながらも、知らず知らずのうちに彼女のことが頭を過るのでした。
“さすがにもう起きたかなぁ、さすがに怒ってるだろうなぁ。またメッセージ送って来るかなぁ。”
彼女が寝ているスキに部屋を抜け出したのは私。抜け出す時には、“もう会うことはない”と決めた上での行動だったはずなのに・・・実に虫のいい話である。
シャワーを終えノートパソコンを立ち上げる私、ふと携帯電話に目をやると充電中とは違うメッセージの受信を知らせるLEDが点滅しているのに気づいたのでした。
携帯電話を充電ケーブルから取り外し手に取った私でしたが、机の上にそっと戻し充電ケーブルにつなぎ直したのでした。
しかし、キーボードをたたく指を邪魔するかのように、おそらく彼女からであろう受信メッセージを示すLEDが気になって仕方ないのでした。
集中できないながらも捗らない仕事を片付けていたのですが、意を決してメッセージを見ることにした私。
しかし、私がシャワーを浴びていた間に受信していたのは、携帯キャリアのCELCOMのプロモーションメッセージ、彼女からではなかったのです。
“ふぅ～”、心の中で溜息をついた。
今更ながら、後味の悪い別れを選択した自分がちっぽけな男であることを感じるも後の祭り。
“世の中の男なんて、きっとみんなこんなもんさ”と言い聞かせ、再びパソコンに向かう私。
どれくらいパソコンとにらみ合っていただろう、当然仕事が捗らないのはホテルのwifiが遅いせいだけではないことは自分でもわかっていた。
まるでキーボードの上に何かが置いてあるように指の動きを邪魔するのです。
すると突然、部屋の沈黙を破るメッセージ受信の着信音、彼女からのメッセージだということは直感的にわかった。
が、すぐさま内容を確認したかったが、“彼女にすぐに「既読」を知らせないほうが賢明だ”という私がそれを躊躇させたのでした。
しかし、そんな感情が長くは続くはずもなく、私はタバコに火をつけると彼女からのメッセージを開きました。
どうやら彼女は、今日シンガポールへ帰っていくようで“お別れの挨拶”メッセージが綴られていたのでした。
そして、すぐさま届く「泣き顔」スタンプが届く。
彼女にとった行動が如何に大人げなく無責任だったか、私を反省させるには十分すぎる２つのメッセージ（１つはスタンプだが）。
どういう返信を返そうかと脳みそのシワの隅まで使いいろいろ言葉を見繕おうとするが、なかなか見当たりません。
そんな矢先、再び着信音が響き受信された３つめのメッセージ。
“・・・・・”
意図的なのか、誤送信なのか、それともバカにされているのか。。。
しばらく様子を見るために来る確証はないものの、４つめのメッセージを待ってみることにしたのでした。
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