結局、彼女からの4つめのメッセージを受信することのなかった私のスマホ。
無意識のうちに開いたPCで「クアラルンプール発シンガポール行き」のフライト情報を眺めていた私は、出発までにはまだ十分な時間があることを知り、クアラルンプール空港(KLIA)まで足を運ぶことにしたのでした。
とは言うものの、彼女のフライトを確定する要素はなにもないし、もしも彼女が空港からメッセージを送っていたとすると既に飛行機は離陸済み。“会える”保証など何処にもないのである。
彼女の部屋から逃げ帰った自責の念も背中を押したのかもしれないが、タクシーに飛び乗り一路KLIAへ。
車中でも彼女へメッセージを送ってみる私だが、返信は来ない。
“無視されている?もしかしたら既に飛行機の中?”、こんなことを確認するには直接電話を掛けてみれば一目瞭然なのだが、私にはその勇気がなかったのでした。
ラッシュアワーがひと段落したクアラルンプール郊外、小一時間ほどでKLIAへ到着。
この時点で何かしら“達成感”のようなものを感じる私。
半ば衝動的にここまで来たことは、“彼女に会える”ことを期待した行動ではなく、“会いに行ったけど会えなかった”ことで自分の中で何か「線」を引こうとしているのがわかったのでした。
空港ロビーに入った私だが、明らかに彼女を血眼で探しているわけではない。
とりあえず中をぶらぶら散策、空港規模のわりに利用客の少ない構内は相変わらず何か閑散とした印象を与える。
私は、フライトの離発着を示す大きなボードに立ち止まることなくシンガポール航空とマレーシア航空のチェックインカウンターを覗いてはみるものの人気はない。
“この光景を見るためにやって来たようなもの・・・。”、自分の中で何か整理がつき私は彼女を探すことなくブキビンタンへ戻ることにしたのでした。
タクシーの中からは暗闇包まれようとしているKLタワーが見え始め、今晩は何をして遊ぼうかと思案し始めた私の頭の中に既に彼女は居ないのでした。
ブキビンタンに到着したころには辺りはすっかり暗くなっていたが、まだこの通りが目覚めるには早い時間だった。
タクシーを降りた私は、部屋に戻ることなく一杯ひっかけるようと人通りも多くない通りのバーでビールをすすったのでしたが、小腹が空いたことも手伝いセブンイレブン脇の“いつもモンゴリアンバーベキュー”へ足を運ぶのでした。
飲み歩くにはまだ早い時間だが世間では夕飯時、相変わらず込んでいる店内に陳列されている具材を物色する私。
後ろから私のシャツの裾が引っ張られるのに気づき振り返ると、そこにはシンガポールへ飛び立っているはずの彼女が微笑みながら立っていたのでした。
「あら、アナタもここ好きなのね。ワタシも大好きなのよ、美味しいよねここって。」
日中のメッセージのやり取りからは想像できない第一声を浴びせてくる彼女に戸惑いながらも、微笑み返すしかない私。
いろいろ聞きたいこともあるが、聞かれたくないことも多々ある・・・しかし、行きがかり上同じ席につかないわけにはいかないのは明白。
私は、先に着き席を確保している彼女のテーブルに一緒に腰掛けたのでした。
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この記事へのコメント
pearl
そうなんですねー、でも別れ際が後味悪かったとしても空港まで行ったのはジェントルマンではないでしょうか。なかなか出来ないことだと思います。
かる
いつも応援ありがとうございます。
こんな記事たちに反応いただき感謝しております。
これからも本館のようからたくさんの記事が引っ越してくると思いますが、宜しくお願いいたします。
かる