
何とも“収まりの悪いモノ”をぶら下げながらトイレから戻った私、眠ってはいないが横たわったまま動かない彼女。
私は彼女の傍らで収まりの付いていないモノが砲撃準備を解除するのを待っていたのでした。
しばらくの間沈黙が漂った部屋、切り出したのは彼女の方からでした。
「アナタ、まだ終わってないでしょぉ~。」
そうは言われても流血戦を好まない平和主義な私、先日の悪事もあり心の中では“これでお互いさま”で片づけようと割り切ろうと、
「いやいや大丈夫、今日はこれで失礼するよ」
と切り返したが、彼女はどうも納得していない様子。
突然、ベッドから起き上がると、転がしていた旅行カバンを拾い上げ中身を物色し始めたのでした。
「あったわ、これなら大丈夫よね❤」
彼女に心中を見透かされた気分であったが、誘われるまま装着。
ちゃっかりしたもので『できるかも?』と思うと、無意識のうちに砲撃体制へ向けて血流が一か所に流入していくのがわかるのでした。
しかも『ここよ』とばかりに目の前には丁寧に差し出されると、止めるわけにはいかない状況の私。
改めて目の前に差し出されると怯んでしまうものであるが一旦は意を決した私、覚悟はできていた。
方位と距離を確認し満を持して、“いざ!ワープゾーン”へ。
と、意気込んで突入したはよいのだが、何故か瞬殺で果ててしまった私。
彼女との「最後の夜」になんとも不甲斐ない結果に終わった私は、バツの悪さもあり一時も早くこの場を立ち去るべく彼女に切り出した。
「明日の午前のフライトだよね、そろそろ失礼するよ」
一度は終わっている彼女、我に返ったのか私の申し出をあっさり了承するのでした。
そこまであっさり了承した彼女に少し寂しく思いながらも帰り支度を整える私に後ろから羽交い絞めしながら1枚のメモを私に握らせた彼女。
そこには「+65」から始まる番号が記されていて、直感的にそれが彼女のシンガポールの電話番号あることはわかった。
私はその場でスマホを開け、交換し合っていたWeChatのIDと共に保存し直しながら彼女にこう告げたのでした。
「じゃ次に会えるのはシンガポールだね、連絡するよ。」
彼女の羽交い絞めが一瞬ではあるが強くなったことを確認し、私は彼女の手を優しくほどくと部屋を開けたのでした。
夜道をトボトボ部屋に戻って来た私、スマホを何度か確認したが彼女からメッセージは入っていませんでした。
案の定、その後も彼女からの連絡はなく“もう会うことはないんだろうなぁ”と思っていたのですが、再会の機会は意外と早くやってくるのでした。
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