
しばらくの間は酔い覚ましも兼ね2人で夜景を眺めていたのが、
“で、これからオレらどこ行くの?”
という私が気になっているコトをまとわりついている彼女に聞く雰囲気にならない。
彼女にとっては、ここシンガポールは地元と言うこともあってか何気に落ち着いて見える彼女を見ていると、
“彼女の中では、行先は決まっているのだろうか・・・それともここで解散?”
という気にさせられてしまう私でしたが、先に口を開いたのは彼女。
「じゃ、そろそろ行きましょうか」
彼女に誘われるままマリーナベイ サンズへ足を踏み入れた2人。
足を踏み入れたという表現は初めてここを訪れる私にだけ当てはまる言葉だったようで、彼女にとっては『いつもの場所』みたいなようで、キョロキョロする私の手を引きながら目的地が決まっているかのような足運び。
「ちょっと、ここで待っててね。すぐに戻るから。」
どうやら“ここで解散”ではないようだ。
彼女は私を引いていた手を放すと足早に何処かへ消えて行ったのでした。
土地勘のないマリーナベイ サンズ、私にとって「この場を移動する」という選択肢はありませんでした。
程なくすると手を振りながらこちらへ戻って来る彼女が確認でき、置き去りにされなかった安心からか妙に尿意を催した私なのでした。
「ごめん、オレもちょっとトイレに行きたいんだけど。。。」
戻って来た彼女にこう切り出した私。
彼女は、少し不可解な顔を見せながらもう言うのでした。
「トイレこの近くにあったかしら?あっこっちが近いみたいね。じゃ、ワタシも行っておこうかしら。」
“へっ?”
どうやら彼女は、トイレへ行っていたわけではない様子。
彼女が一体どこへ行っていたか聞くよりも、お互い高まる尿意をまずは開放すべくそれぞれトイレへ駆け込んだのでした。
私が用を済ませ表に出たが彼女の姿はなかった。
女性のトイレと買い物が長いのはどこでも同じ、再び彼女の帰りを待つことになった私。
しかし、なかなか姿を現さない彼女に無意識のうちに頭の中では、「(かぐや姫の)神田川」が流れ始めるのでした。
「お待たせぇ~♪」
背中から声がしたかと思うと再び私に纏わりつく彼女、ここまで懐かれると悪い気はしない。
こんな場所に知人がいるわけもない私は、彼女と腕を組みながら歩き始めたのでした。
するとエレベーターの前で立ち止まる彼女は、おもむろに▲マークを押すのでした。
“エレベーターに乗るのか?”
「こちらからでも行けるのよ♪」
微笑む彼女だが、未だ私の中では行先が明確になっていないのだ。
そう思いながらも、やってきたエレベーターは2人と後から駈け込んで来た数名を乗せ上昇を始めるのでした。
彼女がボタンを押した43階でエレベーターを降りた2人だが、彼女が何やらポケットをゴソゴソしていたがさほど気にならなかった。
むしろ私が知りたいのは、「一体どこへ向かっているのだろう」ということ。
エレベーターは、瞬く間に2人の目的の階へ到着すると静かに扉を開いた。
ここがホテルの客室になっていることは、癒されるような音色で流れるBGMとふかふかの廊下に整然と並んだ扉から容易に察しがついた私。
「もしかして・・・」
私の声をかき消すように彼女は、
「あっ、ここだわ♪」
と呟きながらカードを取り出し、オートロックが解除される独特の音と共にドアノブに手を掛けると中に足を踏み入れた彼女は、廊下に佇む私にこう言うのでした。
「いらっしゃい。ここのホテルで良かったんだよね?」
”さっきルーフトップバーで冗談まがいに話しただけなのに、あれからこの部屋を取ったのか?・・・クラルンプールで初めてあった時もそうだったが、コイツいったい何者なんだ?”
私の腕を引き部屋へ誘う彼女。
扉が閉まると無機質なオートロックの音が薄暗い部屋に響いたのでした。
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